"ひとは愛の生き物なの。"彼女は言う。
"けれど―それを自覚している人間は
いったいこの地球に何人いるのでしょうね…?"
 

「…よしっ」
じりじりとうだるような暑さの中、小奇麗なマンションの3階、306号室の前で一人の平凡な女子高生が決意を固めた顔を上げた。
良くも悪くもない普通の顔。平凡に痛んだ平均的な肩までのストレートヘア。160に少し届かない普通の身長。
何を隠そう、私である。私ではあるが…。
「…うぅ…せめてフェニックスが居ますように…っ」
彼と二人は嫌だ。まだ死にたくないし。
のっぺりしたベージュ色のドアの前で、少し祈った私は右手をノックしようと持ち上げて。
「…よし」
叩こうとして振り下ろし、ドアに手が近づいて。
「はいはーい、だれだれ俺のこと呼んだの?って、あーっ。何やってんのシンデレラ?!」
思いっきり空振りした。

私が叩こうとしたドア。内開きのドアを開けて、小学生くらいの少年がこちらを見上げて首を傾げている。
服装は赤いタンクトップのシャツにデニム地のオーバーオール。両手首に色違いのリストバンド。少しうねった長い髪を耳の下辺りでゆるく括っている。素足で玄関に散乱した靴を踏みつけて、小さな口にはアイス棒を銜えた少年。
小学生。夏休み満喫中の小学生男子。彼を外見的に形容するならその言葉が一番しっくり来る。
がしかし、あくまでそれは外見の話である。実際年齢はもうちょっと上…というか確か年齢的には高校生だ。
「…おはよー、フェニックス」
基本設定(メインマニュアル)、フェニックス。死神の左足。
それが少年の肩書きであり、彼はちなみに小学生の義務教育さえも受けていない。
そんな親方日の丸に真っ向からケンカを売りまくっている少年は何が楽しいのか笑顔で、にこにこしている。そして実際に楽しいらしく、物凄いテンションで声をかけてくる。
「おはよっ!…なになに、何してんの?あ、もしかして新しい遊びっ?ひとりじぇすちゃーげーむ、みたいな?!」
声変わりまでしていないキンキン声があたり一帯へ響き渡る。はっきり言って近所迷惑だ。騒音って公害に含まれちゃいなかっただろうか。
………。うん、やっぱり前言撤回しよう。二人でも良かったかもしれない。
猛烈に嫌になってきた。
せめてコレがデザートフォックスだったら…一緒か。うるさくないけど、一緒か。あのひとの"手足”に普通のひとを求めるのがいけないんだよね。だからこんなにバイト代良い訳だし。
どんだけ人望無いんだよあのひと。
「どーしたんですかー、フェニックス?せっかく淹れた紅茶が冷めちゃいますー…ってアレ?」
歩く爆音機兼なんちゃって小学生のフェニックスの後ろから続けてひょいと顔を出したのは絶世の美人。目を奪われるような透き通った白髪。同じく、輝くように白い、整いすぎた感のある顔。対照的に真っ黒なタートルネックのシャツに、黒いコーデュロイズボン。半端なく高く細い体躯をかがめて、首には白のロングマフラー。とろんとした眠たそうな、少し赤みのある不思議な色の瞳。
一見した感じ、性別不明の物凄い美人。
でた。
死神の左腕。乖離霄壤(アイエテス)、キューピッド。
今日の私の尋ね人、にしてボス。…ボス?!イキナリボスかよ!?
やばー…どーしよ、とりあえず笑っとく、か…?!
「…やっほー、キューピッドさん。ご機嫌いかが?」
とりあえず機嫌を損ねると危険なので話が出来るかどうか声だけかけてみる。
あーマジでやばい。顔が…ッ、顔が絶対引きつってる…っ!!
足はいつでも動けるように逃亡体勢だ。まあたぶん、あっちが本気で掛かってきたら逃げても無意味なんだろうけど。気持ちだけ。気持ちって大事だよね。
「あ、はい、おはようございますー。って言っても、僕ら今からご飯なんですけどねー。あ、シンデレラも一緒に食べていきますかー?」
私の期待を思いっきり裏切って、キューピッドさんはやんわりと、天使のように微笑んだ。
今何時だとおもってんだお前もう12時だぞ。と言うのは、もちろん私の心の中だけの話。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
The present status...
Player's entry>>>私"シンデレラ"
Enemy's entry>>>Un noon
Others>>>死神の左足"フェニックス" 死神の左腕"キューピッド" 
.........

 

 

 

 

 

Reset...? Continue...?
Game over...?