「今日はっシンデレラ、と、ごっはっんー♪ ごっはんーごっはんーイエイとぅるっるーんっ」
くるくる回るフェニックスが両手に4つも大皿を持ってやってくる。
しかも歌いながら。
恐ろしくてしょうがないが、近寄ると逆に危ないので極力無視。
私が座ったテーブルにはすでに3つも大皿が置いてある。
右から順にイタリアンスパゲッティの山。
みかんほどの大きさのデカ焼売と豚満のこれまた山。
焼き魚の少し他より小さな山と、丘ほどの大きさの大根おろし。
…なんなんだこのまとまりのなさ。
フェニックスが新しく持ってきた皿も見事にバランバランな料理が乗っかっている。
しかもぜんぶ大量だ。
10人分ぐらい軽くありそうなこれらの品々、実は全部キューピッドさんの手作り。
しかも驚くべきは毎日毎食このぐらいの量を食らっている彼ら…というかまあ、ほとんどキューピッドさんだが。
フェニックスが食べるのは人並みの量だけなのだ。
最早バイキングみたいになっているテーブルから、フェニックスは小皿に好きなものをチョイスして食べる。
ついでに言っとくと彼は人並みに小食なので、ほとんど減っていない。
つまりどーゆーことかというと…恐ろしい話なのだが、キューピッドさんが全部食べる。
ちなみにキューピッドさんは太っていない。
どっちかと言うと、というか明らかに痩せ型。
いつも上に着ている服は体にフィットするタイプの細い服だし、下も細身のジーンズが主。
どっかのモデルかとおもうほどスタイルも顔も申し分ない。
しかしこの食欲。
朝っぱらから…ってゆーかもう昼だが…うーん、女の子の私としては羨ましすぎる体質だ。
「…でー。 今日はどーゆーご用件でしょうー」
「え? ん、あー…」
ものすっごく言いにくいんですけど。
お腹も膨れたところで切り出したのはキューピッドさんだった。
にこにこ笑顔で私の正面椅子に座って小首を傾げるキューピッドさんに、私はそう前置きする。
綺麗な指を組んでその上にあごを乗せるというキザ仕草も、キューピッドさんがやるとめちゃ自然だ。
キマり過ぎだろう。
ちなみに皿を運び終えたフェニックスは私の隣の席を陣取っていた。
「なになにぃ? 俺も混ぜて俺もーッ」
「…うん。 いいんだけどってゆーかフェニックスにも聞かなきゃなんだけどさ」
「んー?」
わくわくきらきらなフェニックスが期待一杯、夢一杯な顔で私を見上げてくる。
………。
私は覚悟を決めた。
「右京輪廻って知ってる?」
「えーッ?!だぁれそのなんか叫んでるっぽい名前のひと?!」
「なんか両方とも名前みたいですよねー」
間髪いれず盛大に仰け反ってオーバーリアクションでハイテンションにボケをかましてくれるフェニックスと全くもって変わりが無いキューピッドさん。
お前らなあ…!
「…んで?結局知らないの?」
「知らなーいっ」
「知らないですねー」
「あっそう…」
まあそりゃあそうだろーなー。
私も今日メールで死神さんに聞くまでそんなひと知らなかったしなー。
つーかどんな名前なんだよ。
「んー…フェニックスはともかく僕はセカイから絶縁されていますからねー。 多分よっぽどじゃないと知らないとおもいますよー?」
いや、自分のことを疑問形で言わないでキューピッドさん。
まあ分かってたけど。
キューピッドさんは知らないだろーなーって。
…表キューピッドさんは。
「…でね、こっからが言いにくいんだけどさ」
「むー?」
ココからが大事なのだ。
上手くやらないと生死に関わるから。
ココで死んだらダメだ。
ココで私が死んだら話が続かなくなってしまう。
一話目なのにッ!!
慎重に。
最善を。
選択し、厳選しなければ。
がしかし、哀しいかな私の頭は某地獄の番犬の名前の引籠り系で性格劣悪な天才少年のように出来てはいないわけで。
まあ結果的に結果だけいうと。
私はいたって普通にストレートに、キューピッドさんに声をかけた。
引きつった笑顔で。
それが良かったのかどうかは私にも分からない。
だって彼が分からないから。
だって彼が狂っているから。
そして。
私もきっと、狂っているんだろう。
「チェンジ、お願いできる?」
「…? あー、白妙ですねー? いいですよーちょっと待ってくださいね…」
そう言って虚空を見上げるキューピッドさん。
怪しいぜ…めちゃ怪しいよ普通の人が見たら。
そして、待つことしばし。
暇になったフェニックスはなんか妙においしいコーヒーを淹れてくれた。
私が暢気にもコレおいしいなー、どこのかなー、後でちょっと分けてもらおーとか思っていたそのとき。
彼が。
キューピッドさんが動いて。
キューピッドさんが一瞬浮き上がって。
キューピッドさんの手が、細い腕が、いつの間にか私が使っていたスプーンを私に。
まるでプリンでもすくうかのように、まるでスープをすくうかのように。
私の首にスプーンを、私の皮一枚の位置にスプーンを。
白い髪が宙に浮いて。
白い髪が宙を舞って。
キューピッドさんは、奇麗に哂った。
皿が何枚か、遅れて割れる音がした。
…床は大惨事になってるんじゃないだろうか。
まあそんなカンジで。
固まってる私、とキューピッドさん。
フェニックスはじーっとこっちを台所から窺いつつコーヒーをすすっている。
…アイツ後で絶対しばく。
「…やあ、こんにちわですぅシンデレラ、なぁんてえッきゃっははァっ! よーぉ、おねーちゃんいー度胸だな僕を呼びつけるなんてさあ? はんッテメエ何様だってんだあぁん?」
にやにやと。
先ほどとは打って変わって気味が悪いくらい正反対の表情で哂うキューピッドさん。
凶暴なキューピッドさん裏バージョン。
白妙さんである。
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