繋がっていたいと思うのです。
  


フェニックスを荷台に乗せても、自転車のスピードは殆ど落ちない。びっくりするほど彼には体重が無いからだ。
ヘタをすれば、彼より米袋の方が重い。
「ウキョーさん、見つかった?」
「今、ケルベロスが探してる、はず」
「探すだけー?」
「死神さんは連れて来いって。でもなんか、本名じゃないらしくって、時間かかるって言ってた」
「Kが」
「そう」
フェニックスはケルベロスをKと呼ぶ。他のメンバーとの兼ね合い上、2人は良く一緒に仕事をしているから、その辺が理由だろうと踏んでいるが。
そういえば、ケルベロスもメンバーの名前をちゃんと呼ばない。エフェイクボイスはエフ、フェニックスはフェイ、デザートフォックスに至っては狐と呼ぶ。
「じゃっあー俺はどっちかなっ?キューピッド達も呼ぶってコトはKのサポートかな。どっちがいい?」
「…別に、どっちでもいいけど」
他愛のない話をしながら自動ドアを抜けて店内へ。照明が若干暗い。
「あ、こんちわぁ、チビちゃん。久しぶりぃ」
こちらに気付き、気の抜けた声で笑いながら、レジの前に座った店員がフェニックスに手を上げた。
彼の趣味では無いだろう、ごてごてとシールで飾られて可愛らしい名札が胸元で揺れる。かんざきりひと、と太マジックで強調してあるが、何分シールが目立ちすぎだ。
「おひさー。りんりん、パソコン貸してっ」
「ん。さっき、若旦那から連絡来たよ。確か44番ブースだったよねぇ」
若旦那とはケルベロスのことだ。神戸財閥の跡取り息子。若すぎる若旦那である。
「はいどーぞ、鍵でーす」
門崎里一。昔は漢字だった名札は、名前が分かりにくいと言う独断で平仮名になったそうだ。
彼は死神さんの関係者ではないが、同業者である。死神さんは彼のことを狼の耳と呼んでいる。
「ありがと」
「あい。…ふふ、チビちゃん達がこっちに来たって知ったら、水俣は怒るかもしれないねぇ」
言わないけど。
けらけら笑いながら彼は、自然に頬杖を付いて声を潜めた。
「ケルベロスから色々教えてもらっちゃったから、こっちからも情報提供してあげようね。俺らは今の所、動く予定ナシ。まあ今後どうなるかは分からないけど。何かあったら教えてあげる」
人の良さそうな糸目は、笑っていても鋭い。
「今回は、敵じゃ無いと良いねぇ」
「そだねー」
聞いてるんだか聞いてないんだか微妙な反応の後、じゃあ俺行くね、と言いおいて、ぱたぱたと店内を走って行ったフェニックスに手を振りながら、門崎さんは私を見た。ふわりと笑う。
「キミはチビちゃんと一緒に行かなくていいのかい?」
「本当に、そう思ってますか?」
あれれ、と今度は口だけで笑って見せ、門崎さんは首を傾げた。
「うん?なぁに?」
「…動かないって」
むしろ。敵じゃ無いと良いと、彼は本当に、心の底から、そう思っているんだろうか。
門崎さんは卵みたいにつるんとした顎をさすりながら、そこか、と言った。
「んー、動かないと思うよ?若旦那にも一枚噛まされちゃったし、そうじゃなくてもキミたちっておっかないから、こっちとしてもあんまし友好関係崩したく無いんだよねぇ。イマイチその辺、上手く伝わってない輩が若干いるみたいなんだけども」
犬養とか、キミとかね。
狼の爪、犬養美里。狼の牙、水俣遊里。共に”マスター”である門崎さんの命令を受けて動く狼だ。
「水俣はチビちゃんたちが好きみたいだから良いんだけど、犬養は何回言い聞かせてもダメだねぇ。困ったもんだ全く」
全く困った風も無く手のひらを振る門崎さんは、胸ポケットからケータイを取り出して開いた。
「ま、個人的にも若旦那には借りがあるし、今回は大人しくしてるよ。よっぽどのことが無ければ」
世間話をするように気楽な彼の言葉を裏返せば、よっぽどの依頼があれば狼も動くと言うことである。
全く、油断も隙もないひとだ。やっぱり信用ならないなと思った。

扉を閉めずに室内に設置されたパソコンを起動させるフェニックスに、秘密を守るとか言うことは出来ないだろうとつくづく思う。
ドアくらいちゃんと閉めろ。
「なんだって?」
「ん?あー、んーと…アップルパイが食べたいって」
「…は?アップルパイ?」
「うん。なんかね、パレットの予約限定アップルパイが欲しいんだってさ」
「まさか…そんなコトの為にわざわざメモリ割いたの…」
「みたいだねっ」
眩暈がしてきた…。馬鹿だ…コイツら、馬鹿すぎる。
「でも丁度いいよね。帰りは徒歩だもん。俺、予約して帰ろーっと」
「…」
そんな、パシられてていいのか17歳…相手は若干10歳だぞ。

帰りにまた門崎さんに絡まれた他はなんの問題も無く、フェニックスと別れた私は宣言通り本屋に向かった。
とりあえず、何が何でも数学の参考書がいる。…というほど困っちゃいないが。
まあ、そんな訳で非常にユルい気分で参考書を吟味していると、ブレザーの中でケータイが震えだした。メールかと思って放置していたが、バイブが長い。どうやら着信らしい。
「はい、もしもし」
あ、番号確認してない。んー…まあいいか。
「ちょぉ…無視とか、もう超ヒドくないッ?」
耳がキンキンする。思わず耳からケータイを離してしまった。
つか…コレ、誰?
「…ねぇ。ねェってば、ちょっと、ちゃんと聞いてる?」
「いや、聞いてるけど」
マジで誰だ?
番号を確認してみたが、非通知である。
どういうこっちゃ。非通知って、どうやってんだよ。怪しすぎるだろう。
「ホント?ウソつかないでよ、シンデレラ」
「あ」
その声には聞き覚えが無いが、その言い回しでピンと来た。ウソを極端に嫌う、知らない声。
私をシンデレラとコードネームで呼ぶ声。そんな知り合いは1人しかいない。
私は少し声を潜めた。
「もしかしてあんた…エフェイクボイス?」
「ぴんぽーん。随分と時間かかったねー。もう、すぐ気付いてよ」
ぱちぱちと拍手のような音がする。随分とご無沙汰だった右腕は、何はともあれ元気そうだった。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
The present status...
Player's entry>>>私"シンデレラ" 死神の左足"フェニックス"
Enemy's entry>>>ウィザード"右京輪廻"
Others>>>店員"門崎里一" 死神の右腕"エフェイクボイス"
.........

 

 

 

 

 

Reset...? Continue...?
Game over...?